キューブ

こんなのあり?ラストは予想できた?

ほんとうにこのシチュエーションは驚きました。監督のヴィンチェンゾ・ナタリは新人で低予算ということもあったのでしょうがこんな映画の作り方があったとは…。

警官、医者、大学生、脱獄のプロ?、精神病患者など様々な経歴の男女6人がある日突然正体不明の四角形の部屋に閉じ込められこのCUBE状の建物から脱出しようとする物語。ルービックキューブのように四角形の部屋がいくつもあり行く先を誤れば殺人トラップのえじきになるという設定。

シーンはCUBEと呼ばれる建物内のみで外のシーンはしいていえば1カットのみ(?)映画の中でCUBEの存在理由、正体等はいっさいあきらかにされずただひたすら脱出をこころみる人たちの脱出劇を描いています。異様な状況、空間、次々とトラップのえじきになる仲間達…。恐怖に追い込まれ仲間割れする人間の心理的弱さも演出され、最初に持った登場人物の印象が大きく変化していきます。はたして誰が最後まで生き残るのかラスト1分まで釘付けになることでしょう。

また、どの部屋が安全かそうでないのかを見分ける法則を発見して危機を乗り越えていくのですがそれを見つけるのも楽しみ方のひとつでしょう。意外な人物が鍵を握っています。

ビデオには短編で『ELAVATED』という作品も収録されていますが、これもまた惹き付けられそうなスリル、怖さがあります。両方とも見る価値あり!!『押さえておくべき映画』のひとつでしょう

エニイギブンサンデー

語るのよアル・パチーノが…!

プラトーン」「JFK」のオリバー・ストーン監督がアメリカの国技ともいえるアメリカンフットボールを舞台にした人間ドラマ。タイトルの”エニイギブンサンデー”とはアメフトの試合が毎週日曜日に行われており、全てはその日(日曜日)のために男たちは熱き思いをぶつけ、激しい戦いを繰り広げてゆく…っていう意味合いからつけたみたいです。

舞台はアメリカン・フットボールの世界。ストーリーはそろそろ引退をしてもいい年頃のコーチのトニー・ダマト(アル・パチーノ )とスポーツをお金のためだけに考える若きオーナーのクリスティーナ(キャメロン・ディアス)がチームの運営、作戦を火花を散らしながら、それを取り巻く人間たち…。自分の才能に溺れる若きスタープレーヤーのウィリー(ジェイミー・フォックス)、金に魅入られて選手を道具のように考えているチームドクターのハーヴェイ(ジェームズ・ウッズ)等。アメフトをあまり興味ない人にはイマイチ…って思うかもしれませんがそれを補うのに十分な迫力ある映像、音楽!アメリカ人のアメフトにかける情熱のすごさを感じちゃいます。

なんといってもこの映画はアル・パチーノ様々でしょう!役柄にマッチした彼の個性が光ります!アメフトがわからなくてもクライマックスの試合前のロッカールームでのトニーの『語り』のシーンはオススメ!!まさしく、熱弁!戦う男の内面が溢れだし、関を切ったように熱く語ります。私的にはこういうシーンがあるだけで満足です!!

物語の最後にそれまで語っていたトニーの人生論に対して彼自身が”そんなこといったってそればかりじゃねぇ….”という感じのオチのようなシーンもあります。

人生を語るアル・パチーノがみたいならこの映画をお勧めします!

レナードの朝

”生きている”とは?

子供の頃に発病し30年もの間眠り続けていたレナード(ロバート・デ・ニーロ)は医師セイヤー(ロビン・ウィリアムス)の治療によって覚醒する。眠りについたあの日のままの心で目覚めた彼は、鏡に映った自分の姿を見て愕然とする。しかし、やがて失われた時を取り戻そうとするかのように今を生きようとする。”生”を取り戻した彼は積極的に町にくりだしそしてポーラ(ジュリー・カブナー)と出会い恋に落ちる。”生”を取り戻した患者達は当然のように自由を主張するが継続した投薬が必要な病院側と対立、そして薬の効果も薄れてきてまたもとの病状が再発してくるのであった。

私をデ・ニーロファンにさせた決定的作品!この映画で一番の印象はやっぱロバート・デ・ニーロの演技でしょう!どう表現していいかわからないくらいの名演技!!もともと大好きな役者なのですがいっそう好きになっていしまいました。”本当に病気なのかな”って思うくらい…。一時的にしろ”目覚めの朝”を迎え自由を得ると事ができ、失っていた青春を取り戻そうと町にくりだしたり、素敵な恋人ができ人生を謳歌する生き生きとした姿。見てるほうもなにかうれしくなっちゃいます!

特に印象に残ったのがレナードとポーラが食堂でダンスするシーン。元の状態に確実に戻っていく中、この時だけは”硬直”が治まったかのように普通に踊ることができそしてポーラにさよならを告げます。しかしレナードの手をはなさないポーラ、みていて号泣しちゃいます。

ストーリー的には見終わったあとの感動よりもなにかいろいろ考えさせられる感じが強い映画です。セイヤーがレナードの8ミリ映像をみながら「命を与えて、また奪うのが親切なことだっただろうか?」と自問自答するシーンがあります。簡単で当たり前のように感じていますが”生きている”ことの大切さが実感できるような気がします。

ハンニバル

御注意!お食事前はおひかえ下さい。

サイコ・スリラーブームの先駆け的作品『羊たちの沈黙』の続編。

舞台は前作から10年後。あのハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)はFBIの懸賞金付きで指名手配されていた。ハンニバルの唯一生き残りの被害者の富豪メイスン(ゲイリー・オールドマン)はレクターの情報をクラリス・スターリング(ジュリアン・ムーア)に提供する。フイレンツェで名を変えて優雅な日々を送っていたレクターだが、彼の懸賞金に目をつけたフィレンツェの刑事の密告から再び”現役復帰(?)”を果たしアメリカに舞い戻る。 しかし、メイスンは過去に彼に顔を剥がされた事への復讐を企てていた。狂気で想像を絶する方法で…。

感想としてはとにかくグロい!!さすがR指定といったところでしょうか。今回はレクターとクラリスの関係がどうなるのかという事だけでなく、レクターと顔を剥がされた変態富豪メイスンとの対決という側面も描かれています。特にこのメイスン、ハッキリ言ってあのメイクなら誰がやってもいいのではと思うのですけどキレた演技という点でゲイリー・オールドマンがはまっているような気がします。なんせ、この復讐のやり方がまた、エグイ!(よく思い付きます…)

ただ、この映画は単純なサイコ映画ではなく、不思議な表現しにくい恋愛感情もテーマに持っています。そう、レクターのクラリスに対する愛情です。10年前(『羊達の沈黙』)、自分の過去を語る条件でレクターに捜査協力させたクラリス。彼女もレクターに対しては複雑な感情(愛情のようで愛情でないと思うのですけど…)を持ってレクターを追っているのは確かなことです。追う追われるの立場を超えて別の次元で心がつながってるような感じもする二人、特にレクター歪んだ形の愛に注目して下さい。

いろいろポイントが多い映画ですが、やはりこの映画は最後の”狂気の晩餐会”のシーンだと思います。あえて紹介しませんが、このシーンのインパクトが強すぎる為にストーリーが頭から消えてしまいそうなくらい強烈でした。

監督は『グラディエーター 』『ブレードランナー』のリドリースコット。光と影を利用して怖さを引き立てています。また、クラリス役に前作のジョディフォスターからジュリアン・ムーアにチェンンジしたのも注目しましょう。

始皇帝暗殺

始皇帝の孤独、殺し屋の孤独

舞台は戦国の七雄が割拠し混乱が続く中国。秦王・政(せい)(リー・シュエチエン)は民の平和の為秦による中国の統一を目論む。趙の国の人質趙姫(コン・リー)は幼少の時から彼を知り、彼の志に心打たれある策を進言する。その策とは趙姫自身が政に追放されたと装い燕に潜入し燕から政への暗殺者を差し向けそれを失敗させて無条件降伏を余儀無くさせるというものであった。趙姫は計略の為、政の為、民の為自分の顔に傷をつける。政が彼女の顔の傷を観る度志を忘れぬようにと…。しかし政の精神的支えであった趙姫が秦の国を離れたことで彼の精神バランスは狂いはじめる。そして自分の出生の秘密を知った時、人間不信という猜疑心により狂気の暴走が始まってしまう。

一方、同じ時代に政と同じように心に傷を持つ一人の男がいた。名は荊軻(けいか)(チャン・フォンイー)、稀代の殺し屋。ある事件を切っ掛けに人間としての心を閉ざしていた彼だが趙姫との出会いにより殺し屋稼業を捨て、人間らしさを取り戻す。計略の為に彼に近付いた趙姫だが彼に心惹かれてしまう。そんな時、政が趙姫の母国趙に進行し国を滅ぼしてしまう。絶望する趙姫、その姿に荊軻は政の暗殺を決意する。たとえ成功しても生きて帰ることはできないと知りつつ…。

中、日、仏、米の四カ国合作の壮大な歴史ドラマです。秦の始皇帝というと法家を重んじて儒家を生き埋めにしたり、統一の邪魔となる書物をことごとく焼き尽くした冷酷な人物。というイメージがありましたが冒頭では”結構いいやつ”の好青年でした。物語は彼の心の変化を描いていて、権力が増すのに反比例して孤独になってゆき多くのものを失い、冷徹な仮面の下の怯えた弱々しい男の姿を描写しています。

一番の見せ所は最後の始皇帝と荊軻の対決シーンですが結果はどうでしょう?本当の意味で勝利したのは?孤独な始皇帝と荊軻。どちらも多くの人命を奪い、自分の人生で失ったことが多すぎる二人だ。ただ、荊軻は趙姫の愛を確かなものとし、政は(趙姫の)愛を失った男。皇帝よりも暗殺者の方が「豊か」であるという皮肉が感じられました。

監督チェン・カイコーは作品で丞相の呂不偉を演じていますが、かなり重要な役所。監督がこんなおいしい?役をやっていいのかなとも思いますが、荊軻も実在の人物らしく脚本も歴史に基づいたものということでかなりお勧めの映画かと思われます。