始皇帝暗殺

評価:評価2.5: いまひとつ
  • 始皇帝の孤独、殺し屋の孤独

    舞台は戦国の七雄が割拠し混乱が続く中国。秦王・政(せい)(リー・シュエチエン)は民の平和の為秦による中国の統一を目論む。趙の国の人質趙姫(コン・リー)は幼少の時から彼を知り、彼の志に心打たれある策を進言する。その策とは趙姫自身が政に追放されたと装い燕に潜入し燕から政への暗殺者を差し向けそれを失敗させて無条件降伏を余儀無くさせるというものであった。趙姫は計略の為、政の為、民の為自分の顔に傷をつける。政が彼女の顔の傷を観る度志を忘れぬようにと…。しかし政の精神的支えであった趙姫が秦の国を離れたことで彼の精神バランスは狂いはじめる。そして自分の出生の秘密を知った時、人間不信という猜疑心により狂気の暴走が始まってしまう。

    一方、同じ時代に政と同じように心に傷を持つ一人の男がいた。名は荊軻(けいか)(チャン・フォンイー)、稀代の殺し屋。ある事件を切っ掛けに人間としての心を閉ざしていた彼だが趙姫との出会いにより殺し屋稼業を捨て、人間らしさを取り戻す。計略の為に彼に近付いた趙姫だが彼に心惹かれてしまう。そんな時、政が趙姫の母国趙に進行し国を滅ぼしてしまう。絶望する趙姫、その姿に荊軻は政の暗殺を決意する。たとえ成功しても生きて帰ることはできないと知りつつ…。

    中、日、仏、米の四カ国合作の壮大な歴史ドラマです。秦の始皇帝というと法家を重んじて儒家を生き埋めにしたり、統一の邪魔となる書物をことごとく焼き尽くした冷酷な人物。というイメージがありましたが冒頭では”結構いいやつ”の好青年でした。物語は彼の心の変化を描いていて、権力が増すのに反比例して孤独になってゆき多くのものを失い、冷徹な仮面の下の怯えた弱々しい男の姿を描写しています。

    一番の見せ所は最後の始皇帝と荊軻の対決シーンですが結果はどうでしょう?本当の意味で勝利したのは?孤独な始皇帝と荊軻。どちらも多くの人命を奪い、自分の人生で失ったことが多すぎる二人だ。ただ、荊軻は趙姫の愛を確かなものとし、政は(趙姫の)愛を失った男。皇帝よりも暗殺者の方が「豊か」であるという皮肉が感じられました。

    監督チェン・カイコーは作品で丞相の呂不偉を演じていますが、かなり重要な役所。監督がこんなおいしい?役をやっていいのかなとも思いますが、荊軻も実在の人物らしく脚本も歴史に基づいたものということでかなりお勧めの映画かと思われます。

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