処刑人

現代版「必殺仕事人」。汝、悪人どもをブチ殺すべし

精肉工場に務める兄弟、コナー・マクナマス(ショーン・パトリック・フラナリー)とマーフィー・マクナマス(ノーマン・リーダス)。あるときいつものように行き付けのバーで仲間と飲んでいたが、そこへ店の買収を狙うロシアン・マフィアのイワン・チェコフが部下を引き連れて現れ騒動が始まる。結果、マクナマス兄弟は殺人を犯してしまう。やりてのFBI捜査官 ポール・スメッカー(ウィレム・デフォー)のプロファイリングもあり正当防衛が認められたが留置場での一泊で彼らは”神の啓示”を受ける。そして新世紀の世直し人として悪党抹殺を使命とするのであった。

現代版「必殺仕事人」的とでもいいましょうか、彼らは神の使い的な信念を持って悪党を片っ端から始末していきます。最初からいきなりマフィアの幹部連中をターゲットにしますが兄弟ならではのチームワークで見事始末!神の啓示を受けただけに宗教的儀式の演出もみせある意味自己陶酔的に行動していきます。動機は何にせよ、かなりのバイオレンスアクション。突発的でもありポールのプロファイリングに合わせた演出は優雅さも感じます。特に、マフィアから指し向けられた刺客との対決は圧巻!そしてこの人物との出合いが意外な展開を招きます。

また、ウィレム・デフォーのポール捜査官にも注目。有能な刑事ですが、ナルシストであり同性愛者というかなり濃い役で、濃密なキスシーンも注目です。

各々のキャラクターが上手くからみ合い、最後は意外な展開になっていくこの映画。そのあまりに過激な設定とハードな描写に全米各州で上映禁止にまで及んだこの映画。紆余曲折の末2010年に続編が公開されています。TV放映も少ないのでけっこう見のがしている人も多いのでは。

スパイ・ゲーム

さわやかで渋い!ロバート・レッドフォード

1991年。CIAのスパイ、ビショップ(ブラッド・ピット)が中国の蘇州刑務所に監禁された要人救出に失敗、逮捕される。折しも中国との貿易交渉会議直前のアメリカ政府は彼を見捨てる方針を固める。事前に情報をキャッチしたCIA退職日当日を迎えているネイサン・ミュアー(ロバート・レッドフォード)、師でもある彼はビショップ救出のためCIA本部で上層部との駆引きをしながら密かに「ディナー・アウト」作戦を計画する。

ビショップとミュアーの師弟であり友人関係の二人の絆をスパイという設定でスリリングな展開で描いていく物語。CIA本部で中国政府に逮捕されたビショップとのエピソードをミュアーが語っていきます。ベトナム戦争で出会い、西ベルリンで師弟関係を結ぶ二人。しかしながら冷酷で非情なスパイ活動をゲームと言ってのけてしまうミュアーに対して自己の純粋さを傷つけられるビショップ。そしてベイルートでの悲劇。それはビショップとミュアーの決別だけでなく現地で出会ったエリザベス(キャサリン・マーコック)との別離も招いてしまいます。

最初予告編をみたときにはタイトルのイメージもあってブラピ、レッドフォード両名のアクションもののイメージでしたが、実際はミュアー役のレッドフォードが機敏に立ち回る神経戦。まさに「スパイ・ゲーム」です。”いつか彼の役に立ちたい”と『リバーランス・スルー・イット』以来のブラピの恩返しがついに実現しました。映画をみるまではブラピが主役と思われる人も多いでしょうけど、実際はレッドフォードが主役。年齢も当時65才、ひさびさにみた印象は”おじいちゃん”って感じでしたけど、あの年齢であのさわやかさと色気。サングラスをかけてポルシェにのり守衛に片手で挨拶する姿….。かなりいい感じw。若手の俳優でもあの雰囲気を出せる俳優はそうはいないと思います。

ストーリーはちょとエピソードが間延びしなくてもないのですが全財産を投げ出してビショップのため行動するミュアーに賞賛を送りましょう。最後に”してやられた”CIA幹部達の表情、ベイルートの事件後、別の道を進んだ二人ですが最後に思いである「ディナー・アウト」という作戦名を耳したときの全てを理解したかのようなビショップの表情…。まさにレッドフォードにぴったりのエンディングだと思います。

狼たちの午後

男が恋人の彼氏のために銀行強盗?

この作品は、かなりストーリーがよかったと思います。すこし異様な設定がよかったのかも…。アカデミーオリジナル脚本賞受賞作品です。ちなみに原題の「Dog Day」は日本語で「盛夏」を意味する熟語であり、邦題の「狼」とは関連性が無いそうです。

アルパチーノ率いる3人組が銀行強盗を実行しようとするのですがいきなり仲間の一人が実行直後にびびってしまい脱落。『やっぱ悪いことはできない』っていいながらも、銀行から走り去るときに机の下に隠れている女性を見つるとまた戻ってきてアルパチーノに知らせるという律儀さを披露?それなら最初から強盗なんかするなよって思うのですけど…。

前半は比較的コミカルな雰囲気があります。銀行なのに金庫はからっぽだったり、人質なのに強盗の味方をする銀行員、銀行と人質の間に奇妙な連帯感が生まれ、又店を出て堂々と胸をはって警察と交渉するアルパチーノを応援する野次馬(一般 市民)達。しかもアルパチーノの強盗の理由が恋人の彼の性転換手術の費用の為っていうのが個人的に気に入りました!しかもその恋人と電話で会話がありそれを警察が盗聴してるシーン(後半に本物奥さんが登場します。)、また彼を応援するゲイ団体等…。ここまではシリアスチックなコメディっていってもいいかも知れません。

後半はだんだんとシリアスに展開していきます。警察に完全に包囲されている状況で追い詰められ射殺されることも覚悟するアルパチーノ。そしてラストは突然訪れます…。見終わった後はコメディな印象は消えていました。

スナッチ

テンポのよさとブラピの汚れ?ぶりに拍手!

ベルギーの宝石業者から86カラットのダイヤを奪った強盗団の1人、フランキー・フォー・フィンガーズ(ベニチオ・デル・トロ)。彼の役目はダイヤをニューヨークのボス、アビーに届けること。アビーの指示でフランキーはロンドンに。しかしそこで地元のマヌケな黒人3人組の強盗団が車で追突。彼らが襲撃したのはロンドンの賭けボクシングを牛耳る大悪党の店。強盗は失敗に終わるが3人組はダイヤを見つける。一方、賭けボクシングの三流プロモーター、ターキッシュ(ジェイソン・ステイサム)はパイキー(流浪民)のリーダー(ブラッド・ピット)とトラブルとなり彼のお抱えボクサーを病院送りにしてしまう。仕方なくターキッシュは予定していた賭けボクシングの試合にパイキーを出場させるのだが…。

ロバート・ダウニーJr.ジュード・ロウ主演の「シャーロック・ホームズ」等、2000年にマドンナと結婚(2008年離婚)したことでも知られるガイ・リッチー監督、デビュー作のリメイク権をトム・クルーズが購入し、ハリウッドの有名俳優たちが次回作への出演を熱望したことでも有名ですが今回はやはり2000万ドルと言われるブラッド・ピットが格安の値段で出演を承諾、しかも現場での特別待遇は不要と申し出たということでしょう。ブラピの他にもかなりのアクの強い俳優達の出演、ベニチオ・デル・トロに至っては”え~、こんなでいいの?”って思う役回り。その他にジェイソン・ステイサム等はっきりいってもったいないって感じちゃいます。

ストーリーについてもパイキーや元KGB崩れの武器商人、不死身の殺し屋等癖のあるキャラクター達が登場しますがテンポの良さ、そしてクールなカットで時間が経過するのを忘れさせる程。一見すると複数のエピソードが最後に一つになるパターンの映画特有の登場人物の複雑さと強引な展開に苦しむかと思いましたがテンポの良さも手伝って楽しみやすくラストのオチも結構いけてるストーリー展開になっています。

印象的なのはアクションコメディのジャンルになると思うのですがイギリスとアメリカ映画がマッチしたのか?日本的な感じのアメリカ的インパクトある笑い(何のこっちゃ??)でしょう。ボクシングの試合のシーンでブラピに『わざと負けろ』と言っていたのにいきなり相手をぶん殴ってKOしてしまった瞬間のターキッシュの表情!あのカットは傑作です!ブラピの汚れぶりと共にお勧めの良作です。

コヨーテ・アグリー

毎日通い詰めます!

ミュージシャンを夢見てニューヨークにやってきたヴァイオレット(パイパー・ペラーボ)。自分をあちこちのレコード会社に売り込むが全て門前払い。故郷のニュージャージーの父親のビル(ジョン・グッドマン)に啖呵を切って飛び出した手前、戻ることもできず途方にくれるときに”コヨーテー・アグリー”というBARを知り、そこで仕事をすることになる。コヨーテ・アグリー、それは女性オーナー、リル(マリア・ベロ)の経営する女性スタッフばかりのバー。しかしながらこれがかなり過激!スタッフはバーの台に飛び乗って、腰をくねくね動かしたり、ステップを踏み、客は彼女達を目当てに異様なほど毎日のように盛り上がる毎日。そこでヴァイオレットは恋人ケビン(アダム・ガルシア)と出会う。そしてケビンは彼女の夢をサポートしようとライブハウスのステージを用意するのだが、彼女は大きな問題を抱えていた…。

一言でいえば新世紀の”フラッシュダンス”ともいうべき女性向け青春サクセスストーリー。ストーリーそのものはよくあるパターンで展開も読みやすいものですけど好感の持てる内容になっています。田舎から出てきた少女が都会の現実に揉まれながら成長し、恋も経験(結構な有名人達がギャラリーで覗いていました!…これはみてのお楽しみ(^^))し夢を実現していくというものです。 ところでこの店は実在する店らしいのですけどニューヨークにいくことがあれば自由の女神をみるよりここに足を運んでみたいものですw

また女性人のほとんどがこの映画がメジャー映画初出演とでもいうほどオール新人に近いスタッフ構成になっています。本作の主役に大抜擢されたパイパー・ペラーボは、主人公のヴァイオレットと出身が同じでデビュー前はカクテル・バーでバイトしたこともあるというハマリ役。また音楽も話題になりリアン・ライムス本人も少し出演しています。

ところでこのコヨーテ・アグリーの名前の由来は『酔っ払って見知らぬ相手と寝てしまい、翌朝、腕の中の相手の顔を見て、腕を噛み切ってまで逃げ出したいと後悔すること』罠にかかると自分の足を噛み切ろうとするコヨーテの悪あがきからきているスラングということだそうです。